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民泊の規制緩和|緩んだ点と2026年7月の新通知を解説

「民泊の規制は、結局ゆるくなっているのだろうか」

「始めるなら早いほうがいいのか、待ったほうがいいのか」

もしあなたがそう考えているならば、答えは方向によって分かれます。建物側の規制は実際に緩んでいます。代表例が、2019年6月25日に全面施行された改正建築基準法です。住宅を宿泊施設に転用する際、用途変更の建築確認が必要になる規模が100平方メートル超から200平方メートル超へ引き上げられました。

消防や建築の細かな基準にも合理化が入っています。延べ面積300平方メートル未満なら配線工事の要らない無線式の火災報知設備が使えるようになり、非常用照明にも設置不要となる範囲が設けられました。

一方で、2026年7月に、方向の異なる通知が出ています。観光庁等が地方公共団体に対し、令和8年7月15日付で技術的助言を発出しました。条例によって立地規制やICTを用いた管理の義務付けを行いうる、という内容です。

とくに注目すべきは、営業日数を実質ゼロにする「ゼロ日規制」の扱いです。従来のガイドライン(平成29年12月)では「適切ではない」とされてきましたが、この助言では、一定のケースで合理的に必要と認められる限度において可能であるとされました。

つまり、建てる・改修する側は楽になり、どこで何日営業できるかは自治体の判断で厳しくなりうるという状況です。始めるかどうかの判断材料は、この両方を見ないと揃いません。

この記事では、平均稼働率89%・630室の運営実績をもとに、緩和された点と、2026年7月の通知で何が変わりうるのかを、国土交通省・観光庁の一次情報から整理します。

これから民泊を始めるか迷っている方、すでに運営していて今後が気になる方は、ぜひご覧ください。

※本記事は2026年9月時点で施行済み・発出済みの内容にもとづいています。

建物側の規制緩和は実際に進んでいます

まず、確かに緩んでいる部分から整理します。いずれも施行済みのものです。

用途変更の建築確認が200平方メートル超に

平成30年改正建築基準法(令和元年6月25日全面施行)により、200平方メートル以下の建築物の他用途への転用は、建築確認手続きを不要とするとされました。従来の100平方メートル超という基準からの引き上げです。

あわせて、耐火建築物等としなければならない3階建の宿泊施設等について、200平方メートル未満の場合は、必要な措置を講じることで耐火建築物等とすることを不要とする規定も入りました。

出典:改正建築基準法が6月25日から全面施行されます(国土交通省)

この改正は空き家等の利活用を進めるためのもので、既存の家屋を活かす場面で効きます。詳しくは古民家の民泊は200㎡が分岐点|用途変更と確認の手順で解説しています。

消防設備と非常用照明にも合理化が入りました

  • 延べ面積が300平方メートル未満の場合、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が可能(原則として2階建て以下)。感知器同士が無線通信を行い、感知器間の配線工事が不要な方式があります
  • 非常用照明について、床面積が30平方メートル以下の居室で地上への出口を有するものは設置不要とされています

設備面の詳細は民泊に必要な設備は4つ|消防・建築の要件と確認先にまとめています。

検査済証がない建物への道筋も整理されました

検査済証のない建築物に関するガイドラインは、令和7年4月1日をもって「既存建築物の現況調査ガイドライン」に統合・一本化されました。古い家屋を活用する際の手順が一本化された形です。

出典:既存建築物の活用の促進について(国土交通省)

2026年7月、自治体が制限しやすくなる通知が出ました

ここからが、この記事でもっともお伝えしたい部分です。

令和8年7月15日、観光庁等から地方公共団体宛てに「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」が通知されました。内容は、①届出住宅に係るゼロ日規制、②ICTを用いた管理の義務付け、の2点です。

出典:地方公共団体に対して民泊に関する通知を行いました(観光庁)

ゼロ日規制の扱いが変わりました

通知では、届出住宅に係るゼロ日規制について、昨今の施行状況を踏まえ、それぞれの自治体の判断において、合理的に必要と認められる限度において行うことは可能であるとされています。

そのうえで、従来の扱いについてこう触れています。

ガイドライン(平成29年12月)では、ゼロ日規制については「適切ではない」としてきた

方針が変わった、ということです。

想定されているケース

通知では、次のような場合が例として挙げられています。

  • 住宅地や教育施設等の周辺において、制限を行わなければ宿泊者の頻繁な往来によって住宅地の静穏な居住環境や教育施設等の清純な環境が損なわれるおそれがある場合。この区域で新たな住宅宿泊事業を禁止することや、営業可能日を土日祝前日等に制限すること
  • 住宅地などで、制限を行わなければ定住人口や地域コミュニティーの維持が困難になるおそれがある場合。この区域で新たな住宅宿泊事業を禁止すること

既存の届出住宅も対象になりうると明記されています

ここは、すでに運営している方に関わります。通知にはこうあります。

この区域で既に多くの住宅宿泊事業が実施され、現に静穏な居住環境が著しく損なわれているなどの強い必要性が認められ、他に適切な対応策が存在しない場合には、既存の届出住宅に対しても、一定の猶予期間を設けた上で、住宅宿泊事業の実施を禁止したり営業可能日を土日祝前日等に限定したりするなどの制限を設けることも考えられるとされています。

猶予期間は設けられる前提ですが、届出済みなら安泰という整理にはなっていません。

事業者が変われば継続できなくなる点にも触れられています

見落とされやすい記述があります。

新たな住宅宿泊事業を実施することが禁止された後に、住宅宿泊事業者(届出者)の変更が生じた場合には、法第3条に基づく届出を新たに行う必要があることから、当該届出住宅において住宅宿泊事業を引き続き実施することはできないとされています。

売却や相続で名義が変わる場面に関わります。物件そのものが引き継がれても、届出は新たに行う必要があり、新規が禁止された区域ではその届出ができないという整理です。長期保有や承継を前提に考えている場合、押さえておくべき点です。

ICT管理の義務付け

もう一点が、ICTを活用した管理体制です。通知では、建物が密集している都市部をはじめとして、地域の実情や届出住宅の利用状況などを踏まえ、次のような内容を条例で義務付けることが考えられるとされています。

  • 騒音計や出入口におけるカメラを設置し、モニタリングを行う
  • 一定期間(過去1年間分など)のデータ保存

保存データの確認により、自治体が管理状況を検証できるようにする趣旨です。義務化された地域では、設備の導入と運用が新たなコストとして発生します。

そのほか条例で定めうるとされたもの

通知では、条例によってチェックイン・チェックアウト時間の制限や施設の定員数の上限を設定するなど、法第18条の規定に関わらず、地域の実情に応じて合理的な範囲で必要な規制を行うことが可能であるとも示されています。

ただし「合理的な範囲」という枠があります

自治体が何でも制限できるようになった、という読み方は正確ではありません。通知には歯止めも書かれています。

  • 規制は合理的な範囲で行うこと
  • その目的に応じ、簡易宿所等に対する制限(都市計画など)との整合にも留意が必要であること

整合の例として、住宅地の静穏な居住環境を保護するために住宅宿泊事業を規制する際には、簡易宿所等も同様に規制するといった整合の確保が挙げられています。民泊だけを狙い撃ちにする規制は、この整合の観点から検討されることになります。

また、条例の検討にあたって法の趣旨との関係で疑義が生じる場合には、観光庁観光産業課等に相談するよう促されています。

オーナーとして今すべきこと

緩和と制限の両方が動いている状況で、判断の軸は次のようになります。

  • 物件所在地の条例を確認する。今回の通知を受けて条例が動く可能性があります。届出の前に必ず自治体窓口へ
  • 住宅地・教育施設の周辺かどうかを確認する。通知が例として挙げている区域に当たるかどうかで、将来の見通しが変わります
  • 承継を前提にするなら、届出者変更の扱いを確認する。売却や相続の予定があるなら、この点は事前に窓口で確認しておく価値があります
  • 建物側の緩和は活用する。用途変更や消防設備の合理化は施行済みで、これから始める場合の負担を下げます

条例の確認方法については、民泊の近隣説明|法が求める3つと条例の確認手順もあわせてご覧ください。

まとめ

民泊の規制をめぐる現状を整理します。

  • 建物側は緩和されている。用途変更の建築確認は200平方メートル超から、3階建200平方メートル未満の耐火要件の緩和、消防設備と非常用照明の合理化、検査済証ガイドラインの統合
  • 2026年7月15日、観光庁等が地方公共団体に技術的助言を発出。条例による立地規制とICT管理の義務付けを行いうるとした
  • ゼロ日規制は、従来ガイドラインで「適切ではない」とされてきたが、合理的に必要と認められる限度において可能とされた
  • 強い必要性が認められる場合、既存の届出住宅にも猶予期間を設けたうえでの制限がありうる
  • 新規が禁止された区域では、届出者の変更が生じると事業を継続できない
  • ICT管理として騒音計・出入口カメラ・過去1年間分などのデータ保存を条例で義務付けうる
  • ただし規制は合理的な範囲で行い、簡易宿所等への制限との整合に留意することとされている

「規制緩和が進んでいるから早く始めよう」という判断も、「厳しくなるからやめよう」という判断も、片側しか見ていません。緩んだのは建物をつくる側、動きうるのは営業できる場所と日数です。自分の物件がどちらの影響を強く受けるかで、判断は変わります。

本記事は2026年9月時点の情報です。制度は改正されますし、条例は自治体ごとに異なります。物件所在地の自治体の住宅宿泊事業担当窓口で、必ず最新の取り扱いを確認してください。

今回の通知を受けて条例がどう動くかは、地域によって差が出ます。ご自身の物件がどの影響を受けるのか、判断がつかないところはお気軽にご相談ください。平均稼働率89%・630室の運営を通じて見てきた実務の観点から、確認すべき点をお伝えします。

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