民泊に必要な設備は4つ|消防・建築の要件と確認先
「民泊を始めるのに、結局どんな設備をそろえればいいのか」
「調べるほど消防だ建築基準法だと出てきて、何が自分の物件に効くのか分からない」
もしあなたがそう考えているならば、まず押さえるべきは「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」の4つです。住宅宿泊事業法にもとづく民泊で、住宅に備わっていることが求められる設備はこの4つと定められています。
そのうえで、家主が不在になる運営を選ぶ場合は、この4設備に加えて自動火災報知設備などの消防用設備と、非常用照明器具が必要になります。設備の話が複雑に見えるのは、この「住宅として必要な設備」と「安全のために必要な設備」が別の法律で定められているからです。
さらに、設備をそろえる前に越えなければならない関門がもう一つあります。その建物が法律上の「住宅」に該当するかという点です。観光庁の民泊制度ポータルサイトでは、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは対象外とされています。設備を完璧に整えても、ここで外れると届出そのものができません。
そして規模によって求められる設備が変わります。たとえば延べ面積300平方メートルという線は、消防設備の選択肢と、ログハウス(丸太組構法)の構造基準の両方に関わってきます。同じ数字が二つの法律で効いてくるため、建てる前に知っておく価値があります。
ただし、どの物件でも同じ設備でよいわけではありません。家主居住型か不在型か、宿泊室の床面積、延べ面積と階数。この3つによって、必要な設備は変わります。
この記事では、平均稼働率89%・630室の運営実績をもとに、民泊に必要な設備を国土交通省・観光庁と総務省消防庁の一次情報にあたりながら整理します。読み終えたときに、自分の物件で何を確認すればよいかが分かる状態を目指します。
これから物件を建てる方も、すでにお持ちの家屋を活用したい方も、ぜひご覧ください。
民泊に必要な設備は「台所・浴室・便所・洗面設備」の4つ
住宅宿泊事業を行える「住宅」には、次の4つの設備が設けられている必要があります。
- 台所
- 浴室
- 便所
- 洗面設備
出典:民泊制度ポータルサイト「対象となる住宅」(国土交通省・観光庁)
4設備の解釈は思っているより柔軟です
この4設備は、それぞれが独立した立派な設備である必要はありません。同ポータルサイトでは、次のように示されています。
- 一つの設備に複数の機能があるユニットバス等も認められる
- 浴室は浴槽が無くてもシャワーがあれば足りる
- 便所は和式・洋式を問わない
「民泊向けに水回りを全面改装しなければならない」と思い込んで断念される方がいますが、法律上の要件としてはここまで柔軟です。
公衆浴場での代替は認められません
一方で、明確に認められていない点もあります。公衆浴場等での代替は認められず、設備は届出住宅に設けられている必要があるとされています。
温泉地の物件で「すぐ近くに共同浴場があるから浴室は不要」と考えたくなる場面がありますが、この考え方は通りません。
同一敷地内の複数棟を一つの「住宅」として届け出られます
複数棟を建てる場合に効いてくる規定があります。同ポータルサイトでは、同一の敷地内の建物について一体的に使用する権限があり、各建物に設けられた設備がそれぞれ使用可能な状態であれば、複数棟の建物を一の「住宅」として届け出ることが可能とされています。
棟ごとに4設備を完備させる設計にするのか、一体の住宅として届け出るのか。建築計画の段階で方針を決めておくと、後戻りが減ります。
設備より先に確認すべき「住宅」への該当性
ここが見落とされやすい論点です。設備をそろえても、その家屋が法律上の「住宅」に該当しなければ届出はできません。
該当するのは次の3類型です
- 現に特定の者の生活が継続して営まれている家屋(生活の本拠。短期使用は非該当)
- 分譲または賃貸形態で、居住用住宅として入居者の募集が行われている家屋
- 生活の本拠ではないが、少なくとも年1回以上は使用している家屋(随時居住用)
民泊専用の新築は対象外とされています
同ポータルサイトでは、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは非該当と明記されています。
別荘やセカンドハウスを建てて、使わない期間だけ民泊として貸し出したい。こうしたご相談は多くいただきますが、このとき鍵になるのが3つ目の「随時居住用」です。年1回以上の使用という実態があるかどうかが分かれ目になります。
自己利用の頻度や記録の残し方は、設備の仕様を詰めるより先に整理しておくことをおすすめします。具体的な判断は物件所在地の自治体の住宅宿泊事業担当窓口で確認してください。
家主不在型で必要になる消防用設備
4設備を満たしたうえで、次に関わってくるのが消防法です。
家主居住かつ宿泊室50平方メートル以下が分岐点になります
総務省消防庁は、家主が居住し、かつ宿泊室の床面積が50平方メートル以下の場合を除き、自動火災報知設備等の設置をはじめ、ホテルや旅館と同様の防火安全対策を講じることが必要としています。
裏を返すと、オーナーが住まない家主不在型では、規模にかかわらず原則としてホテル・旅館と同等の防火安全対策が求められるということです。管理を外部に委託して自分は現地に住まないという運営を選ぶなら、ここは避けて通れません。
延べ面積300平方メートル未満なら配線工事の要らない選択肢があります
消防庁によれば、延べ面積が300平方メートル未満の場合、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が可能です(原則として2階建て以下のものに限る)。
この設備には、受信機・感知器・音響装置を配線でつなぐ方式のほかに、感知器同士が無線通信を行い、感知器間の配線工事が不要な無線式の連動型警報機能付感知器で構成されるものがあります。
既存の建物を生かして民泊にしたい場合、壁や天井を開けずに済む可能性があるという意味で、この選択肢が使えるかどうかは工事費に影響します。
誘導灯が免除される場合があります
誘導灯については、消防法施行規則第28条の2第1項第4号の2および同条第2項第3号の2に規定する区画を有する場合、原則として10階以下の民泊が存する階以外の階の誘導灯が免除されるとされています。
区画の要件は図面にもとづく判断になります。所轄の消防本部・消防署への事前相談で確認してください。
非常用照明器具が必要になるかどうか
建築基準法側の措置として、非常用照明器具があります。根拠は国土交通省告示第1109号(非常用照明器具の設置方法及び火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置を定める件)です。
家主同居かつ宿泊室50平方メートル以下で免除されます
届出住宅に人を宿泊させる間、住宅宿泊事業者が不在とならない場合(家主同居)であって、宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下であるときは、非常用照明器具の設置が免除されます。
消防設備の分岐点と同じ「家主の在・不在」と「50平方メートル」で線が引かれている点を押さえておくと、制度全体が整理しやすくなります。
30平方メートル以下で地上への出口がある居室は設置不要です
建築基準法にもとづく非常用の照明装置の基準が合理化され、床面積が30平方メートル以下の居室で地上への出口を有するものについては設置不要とされています。
出典:住宅宿泊事業法における安全確保のための措置(国土交通省)/民泊の安全措置の手引き
平屋や小規模な棟を複数建てる計画では、この規定の当てはまり方が変わります。設計段階で建築士に確認してください。
木造ログハウスで民泊を考えるときの追加確認
丸太を水平に積み上げて壁を設けるログハウス(丸太組構法)には、構造面の専用基準があります。
丸太組構法の技術基準には適用の上限があります
国土交通省告示第411号では、延べ面積が300平方メートルを超える建築物、高さが8.5メートルを超える建築物、地階を除く階数が2以上の建築物は、特定の条件を除き、丸太組構法を用いた建築物の技術基準の適用対象外となります。
ただし例外もあります。1階部分の構造耐力上主要な部分を鉄筋コンクリート造等とし、2階以上を丸太組構法とし、最上階部分に耐力壁を設けず小屋裏とした場合は、地階を除く階数を3以下とすることができます。
出典:丸太組構法を用いた建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める件(国土交通省告示第411号)
300平方メートルという同じ数字が二つの法律で効いてきます
ここが実務上の要点です。延べ面積300平方メートルという線は、消防側では「配線工事の要らない特定小規模施設用自動火災報知設備が使えるかどうか」、構造側では「丸太組構法の技術基準の適用対象かどうか」の両方に関わります。
棟数を増やす、あるいは1棟を大きくするという判断が、設備の工事内容と構造の扱いを同時に動かします。建てる前に延べ面積の見通しを立てておく価値があるのはこのためです。
こだわり設備を入れる前に押さえておくこと
床暖房や大型の壁掛けモニター、ペット同伴に対応した床材など、宿泊体験を左右する設備を検討される方も多いと思います。
これらは法定の必須設備ではありませんが、導入にあたっては内装制限や電気容量、メンテナンスのしやすさを設計段階で建築士・施工会社と詰めておく必要があります。とくに木材を多く使う内装では、火気を使用する設備の配置が論点になります。
設備の仕様そのものより、清掃や点検を委託する側が扱えるかという視点を早めに入れておくと、運営開始後の手間が変わります。特殊な設備ほど、メンテナンスの手順を管理会社と共有しておくことが欠かせません。
設備の要否は、最終的に3つの窓口で確認してください
ここまで挙げた要件は、物件の規模・構造・運営形態によって当てはまり方が変わります。最終的な判断は次の窓口で確認してください。
- 自治体の住宅宿泊事業担当窓口・保健所:住宅への該当性、届出の要件、上乗せ条例の有無
- 所轄の消防本部・消防署:必要な消防用設備、誘導灯の免除可否、消防法令適合通知書
- 建築主事・指定確認検査機関・建築士:非常用照明、内装制限、丸太組構法の基準
条例は改正されますし、同じ制度でも自治体によって運用が異なります。この記事の内容を前提にしつつ、必ず物件所在地の窓口で最新の取り扱いを確認してください。
まとめ
民泊に必要な設備を整理します。
- 住宅として必要な設備は台所・浴室・便所・洗面設備の4つ。ユニットバス可、シャワーのみ可、和式可。公衆浴場での代替は不可
- 設備より先に、その家屋が法律上の「住宅」に該当するかを確認する。民泊専用の新築は非該当とされ、年1回以上の使用があるかが分かれ目になる
- 家主不在型は、家主居住かつ宿泊室50平方メートル以下という免除に当たらないため、自動火災報知設備等と非常用照明器具が原則必要になる
- 延べ面積300平方メートルは、消防設備の選択肢と丸太組構法の構造基準の両方に効く
- 同一敷地内の複数棟は、条件を満たせば一つの「住宅」として届け出られる
設備の一覧を眺めるだけでは、自分の物件に何が必要かは決まりません。決めているのは、家主の在・不在、宿泊室と延べ面積、そして構造です。この3つを先に固めてから設備を詰めると、手戻りがなくなります。
物件の条件を踏まえた設備の要否や、整えた設備をどう維持していくかについては、私たちにもご相談いただけます。平均稼働率89%・630室の運営を通じて見てきた実務の観点から、確認すべき点をお伝えします。
物件の条件によって、必要な手続きも確認先も変わります。ご自身の物件で何が要るのか、判断がつかないところはお気軽にご相談ください。平均稼働率89%・630室の運営を通じて見てきた実務の観点から、確認すべき点をお伝えします。
オーナー様専用のフォームです。ご相談は無料で、その場でのご契約をお願いすることはありません。