民泊の清掃代行|清掃だけ委託できる場合とできない場合
「民泊の清掃だけ外注したい。運営は自分でやるので、清掃代行を探している」
「調べているが、清掃だけを請け負ってくれる会社が見つからない」
見つからないのは、探し方のせいではありません。清掃だけを委託できるかどうかは、どの制度で運営しているかで分かれます。ご自身がどれに当たるかが分かれば、答えは出ます。
旅館業法の許可で運営している施設なら、清掃だけを業務委託できます。旅館業法には、管理業務の委託に関する規定が置かれていないからです。当社も清掃のみのご依頼を承っています。
住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出で運営していて、委託義務がかかる場合はできません。法第11条が、管理業務の全部を一の住宅宿泊管理業者に委託することを求めているためです。清掃は、その管理業務の一部に含まれています。
同じ民泊新法でも、委託義務がかからない場合はできます。家主居住型で自ら管理する居室が5以下なら、自分で運営しながら清掃の実務だけを外に出せます。
つまり判断は、旅館業か民泊新法か、民泊新法なら委託義務がかかるかどうかの二段で決まります。
この記事では、平均稼働率89%・630室の運営実績をもとに、制度ごとの違いを条文で確認し、契約前に確認すべき点を整理します。費用の相場は扱いません。
清掃の外注先を探している方は、ぜひご覧ください。
清掃だけ委託できるかは、運営している制度で決まります
「民泊」と呼ばれる運営は、根拠になる法律が複数あります。清掃の委託については、そこで扱いが正反対に分かれます。
| 運営の制度 | 委託についての規定 | 清掃だけの委託 |
|---|---|---|
| 旅館業法の許可 (簡易宿所・旅館ホテル営業) |
規定なし | できる |
| 住宅宿泊事業法の届出 (委託義務がかかる場合) |
第11条で全部委託を求める | できない |
| 住宅宿泊事業法の届出 (委託義務がかからない場合) |
委託の義務なし | できる |
制度そのものの違いは民泊の業許可|届出・許可・認定のどれが必要かを整理にまとめています。
旅館業で運営している場合:清掃だけを委託できます
旅館業法(昭和23年法律第138号)の全文を確認すると、「委託」という語が一度も出てきません。「管理業」も同じく出てきません。「受託」は2回出てきますが、いずれも附則の「第一号法定受託事務」という別の意味の言葉で、業務の委託とは関係がありません。
旅館業法施行令(昭和32年政令第152号)と旅館業法施行規則(昭和23年厚生省令第28号)も同じで、委託に関する規定はありません。
つまり、旅館業法は業務の委託について何も定めていません。全部を委託せよという規定も、委託を制限する規定もない。だから清掃だけを切り出して業務委託できます。ゲスト対応は自分で行い、清掃だけを外注する、という組み方も取れます。
ペンションや民宿として開業する場合もこちらに当たります。種別の選び方はペンション・民宿の開業|旅館業法の許可と種別の選び方で整理しています。
民泊新法で委託義務がかかる場合:清掃だけの切り出しはできません
住宅宿泊事業法には、対照的に「委託」が23回出てきます。その中心が第11条です。
第十一条 住宅宿泊事業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、当該届出住宅に係る住宅宿泊管理業務を一の住宅宿泊管理業者に委託しなければならない。
委託先は1社に限られ、管理業務は全部をその1社に任せます。「清掃はA社、ゲスト対応は自分で」という組み方が取れないのは、このためです。この構造は貸別荘の運営代行は1社に全部委託|制度と選び方でも扱っています。
民泊新法でも委託義務がかからない場合:清掃だけを外注できます
第11条の義務は、すべての届出住宅にかかるわけではありません。かからない場合は、住宅宿泊管理業者を通す必要がないため、自分で運営しながら清掃の実務だけを地元の業者に頼む形が取れます。
どちらに当たるかの判断は、この記事の後半で整理します。
旅館業でも、清掃の責任は営業者に残ります
ここは見落とされやすいところです。委託できることと、任せたら終わりであることは、別です。
旅館業法第4条は、次のように定めています。
第四条 営業者は、旅館業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない。
2 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
清潔を保つ義務は、営業者に課されています。条文は「誰が手を動かすか」を定めていません。だから清掃会社に任せられます。しかし義務の名宛人は営業者のままなので、仕上がりが基準を満たさなければ、問われるのは営業者です。
そしてもう一点。その措置の基準は、都道府県の条例で定まります。清掃の頻度や範囲について自治体が独自に定めている場合があるため、委託する範囲を決める前に、施設の所在地の条例を確認してください。
民泊新法で、清掃が管理業務に含まれる理由
民泊新法で運営している方に向けて、清掃が制度上どう位置づけられているかを確認します。
民泊制度ポータルサイトでは、委託すべき管理業務を「法第5条から第10条までの規定による業務及び住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全に関する業務」とし、具体例として次を挙げています。
- 台所、浴室、便所、洗面設備の正常な機能の維持
- 水道・電気などライフラインの管理
- ドア・サッシなど設備の保全
- 空室時の施錠確保と鍵の管理
出典:管理業務の委託について(民泊制度ポータルサイト|国土交通省・観光庁)
清掃は、これらを満たすための実務として管理業務の中に組み込まれています。独立した契約の対象として制度が想定しているものではありません。旅館業法との違いは、まさにここにあります。
そもそも委託義務がかかるかを先に確認する
民泊新法で運営している場合、ここを飛ばして代行会社を探すと遠回りになります。
委託が必要になる2つの場合
- 居室数が5を超える場合
- 宿泊者がいる間に事業者が不在となる場合(日常生活の通常行為に要する時間を除く)
除外される場合
自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が同一の建築物もしくは敷地内にあるとき、または隣接しているとき(騒音等を認識できない場合を除く)で、かつ自ら管理する居室の合計が5以下であれば、委託は不要です。
この場合は清掃も含めて自分で運営できます。清掃の実務だけを外に出す形も取れます。
ただし「不在」の線引きには目安があり、生活必需品の購入等は原則1時間、事情により2時間程度までとされています。詳しくは家主居住型で離れを民泊に|委託が不要になる2つの条件をご覧ください。
自分で清掃する場合、清掃だけでは終わりません
委託義務がかからないと分かっても、判断はもう一段あります。清掃は残る業務の一部でしかないからです。
住宅宿泊事業者に課されている業務には、次が含まれます。
- 宿泊者への説明(騒音防止・ごみの処理・火災防止)
- 周辺住民からの苦情への対応。深夜早朝を問わず、常時、応答または電話により対応
- 標識の掲示
- 宿泊者名簿の備付け(氏名・住所・職業・国籍、日本以外の国籍は旅券番号)
- 2か月ごとの定期報告
清掃の負担を外注で減らしても、深夜の電話に出る体制は残ります。近隣対応の水準は民泊の近隣説明|法が求める3つと条例の確認手順、名簿と報告は民泊のサイトコントローラー|必要な場面と選び方の軸で整理しています。
自分でどこまで抱えるかの判断材料は民泊の申請を自分で|できる範囲と手が止まる箇所にまとめました。
実際に清掃に来るのは誰か
管理業務の全部を委託する場合、ここが見落とされがちです。
一部の再委託は認められています
住宅宿泊事業法第35条は、次のように定めています。
第三十五条 住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者から委託された住宅宿泊管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはならない。
禁じられているのは「全部」の再委託です。裏を返せば、清掃のような一部の業務を協力会社に再委託することは認められています。つまり契約相手は1社でも、現場に来る清掃スタッフは別の会社の人である場合があります。
これ自体は問題ではありません。地域に根ざした清掃会社と組むことで、移動時間が短くなり、チェックアウトからチェックインまでの間に入れる体制が作れます。
確認すべきは品質を誰が担保するかです
問題になるのは、再委託先の作業品質に対する責任の所在が曖昧なときです。契約前に次を聞いてください。
- 清掃を実際に行うのは自社のスタッフか、協力会社か
- 協力会社の場合、作業手順やチェック項目を誰が定めているか
- 仕上がりの確認は誰が、どのタイミングで行うか
- 不備があったとき、連絡先はどこになるか
「自社で対応します」と「自社が責任を持ちます」は別のことです。後者であれば再委託していても問題は起きにくく、前者だけを答える会社は実態を確認する価値があります。
費用の見え方が会社ごとに違う理由
民泊新法で全部委託する場合、清掃費が比較しづらくなります。清掃が独立した契約ではなく、管理業務の一部だからです。
管理手数料に含めている会社もあれば、清掃回数に応じて別途請求する会社もあります。リネンや消耗品を含むかどうかでも変わります。同じ金額でも、含まれる範囲が違えば比較になりません。
金額を並べる前に、何が含まれていて何が別途なのかを項目で揃えてください。そこを揃えて初めて、数字が意味を持ちます。
清掃のみのご依頼も承っています
当社は、清掃だけのご依頼にも対応しています。
対象になるのは次の場合です。
- 旅館業法の許可で運営されている施設(簡易宿所・旅館ホテル営業)
- 住宅宿泊事業法の届出住宅のうち、委託義務がかからないもの
委託義務がかかる届出住宅については、法第11条により管理業務の全部を1社に委託することになるため、清掃だけを切り出してお受けすることができません。その場合は運営代行としてお引き受けする形になります。
ご自身の物件がどちらに当たるか分からない場合も、居室数と在宅の状況を伺えば判断できます。
確認すべきことの整理
- どの制度で運営しているか(旅館業法の許可か、住宅宿泊事業法の届出か)
- 民泊新法なら、自分に委託義務がかかるか(居室数と、宿泊者がいる間に在宅できるか)
- 委託義務がかかる場合、相手が登録を受けた住宅宿泊管理業者か(登録簿で照合できます)
- 清掃を実際に行うのは自社か協力会社か。品質を誰が担保するか
- 清掃費に何が含まれ、何が別途か
- 不備があったときの連絡先と対応の流れ
1番目が最初に来るのは、ここで答えが決まるからです。旅館業なら、清掃だけを頼む相手を探せばよい。民泊新法で委託義務がかかるなら、探すべきは清掃会社ではなく運営代行会社です。
まとめ
民泊の清掃代行について、押さえておきたい点を整理します。
- 清掃だけを委託できるかは運営している制度で分かれる
- 旅館業法には管理業務の委託に関する規定がないため、清掃だけの業務委託ができる
- ただし清潔を保つ義務は営業者に残る(旅館業法第4条)。措置の基準は都道府県の条例で定まる
- 住宅宿泊事業法で委託義務がかかる場合は、全部を1社に委託するため清掃だけの切り出しはできない(法第11条)
- 民泊新法でも委託義務がかからない場合(家主居住型・居室5以下)は、清掃だけを外注できる
- 一部の再委託は認められている(法第35条が禁じているのは全部の再委託)。現場に来るのが協力会社であること自体は問題ではない
- 確認すべきは品質を誰が担保するか。「対応します」と「責任を持ちます」は別
- 当社は清掃のみのご依頼にも対応(旅館業の施設、および委託義務がかからない届出住宅)
清掃代行が見つからないという声の多くは、民泊新法を前提にした情報だけを見ていることから来ています。まず自分がどの制度で運営しているかを確かめてください。そこで進む道が分かれます。
本記事は2026年9月時点の情報です。制度の適用は物件の条件によって変わります。物件所在地の自治体の住宅宿泊事業担当窓口、または保健所の旅館業担当窓口で、必ず最新の取り扱いを確認してください。
清掃だけをお願いしたいのか、運営ごとお任せいただくのか。それは物件の条件で決まります。どちらに当たるか分からない段階でも構いません。清掃のみのご依頼も承っていますので、お気軽にご相談ください。平均稼働率89%・630室の運営を通じて見てきた実務の観点から、確認すべき点をお伝えします。
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