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民泊の近隣説明|法が求める3つと条例の確認手順

「民泊を始める前に、ご近所へ説明しておくべきなのだろうか」

「何をどこまで伝えれば、後からもめずに済むのか」

もしあなたがそう考えているならば、法律が求めている近隣対応は3つです。宿泊者への説明(法第9条)、周辺住民からの苦情への対応(法第10条)、標識の掲示(法第13条)。この3つが住宅宿泊事業者の業務として定められています。

意外に思われるかもしれませんが、この中に「近隣住民への事前説明」は入っていません。住宅宿泊事業法には、着手前の近隣説明を一律に義務づける規定がないのです。

そのかわり、始めたあとの対応がかなり重く定められています。周辺住民からの苦情および問合せについては、深夜早朝を問わず、常時、応答または電話により対応する必要があるとされています。宿泊者が不在のときも対応義務があります。

つまり制度の設計は、「事前に説明したかどうか」ではなく「苦情が来たときに必ず出られるか」で組まれているということです。ここを取り違えると、力を入れる場所を間違えます。

ただし、これで終わりではありません。自治体の条例で独自の事項が定められている場合があります。国土交通省のページでも、具体的な条例内容は各自治体のホームページで直接確認する必要があると示されています。

この記事では、平均稼働率89%・630室の運営実績をもとに、法律が求める3つの中身と、事前説明をどう位置づけるかを、国土交通省・観光庁の一次情報にあたりながら整理します。

近所との関係を保ったまま民泊を続けたい方は、ぜひご覧ください。

法律が求めている近隣対応は3つです

住宅宿泊事業法では、住宅宿泊事業者の業務として次が定められています。近隣に関わるのはこの3つです。

  • 法第9条:宿泊者に対する、周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明
  • 法第10条:周辺地域の住民からの苦情および問合せへの対応
  • 法第13条:標識の掲示

出典:事業者の業務[1](民泊制度ポータルサイト|国土交通省・観光庁)/事業者の業務[2]

並べてみると分かりますが、「近隣住民への事前説明」という項目は法律上の業務として置かれていません。説明の相手として条文が名指ししているのは、近隣ではなく宿泊者です。

近隣説明をしなくてよい、という話ではありません。後述するように、やる意味は十分にあります。ただ、制度がどこに重みを置いているかを正しく知っておく必要があります。

法第10条:苦情には深夜早朝を問わず常時対応する

3つの中で、もっとも負担が重いのがここです。

求められている対応の水準

民泊制度ポータルサイトでは、周辺地域の住民からの苦情および問合せへの対応について、次のように示されています。

  • 深夜早朝を問わず、常時、応答または電話により対応する必要がある
  • 宿泊者が不在のときも対応義務がある
  • その場で回答できない場合も、回答期日を明示したうえで後日回答する等の配慮が必要
  • 改善がみられない場合は、退室を求める等、必要な対応を講じる

「営業時間内に折り返します」では足りない、という水準です。深夜2時に騒音の苦情が入れば、その時刻に応答することが求められます。

この一点が、運営体制の前提を決めます

自分で民泊を運営するか、管理を委託するかを迷っている方は多いのですが、判断の分かれ目はここにあります。

深夜早朝を問わない常時対応を、自分で年間を通じて担えるか。担えないなら、その体制を持つ相手に委託することになります。家主不在型の場合は、登録を受けた住宅宿泊管理業者への委託が必要です。

委託を検討する際は、この10条の対応を実際にどう運用しているのかを具体的に聞いてください。「24時間対応」と書かれていても、一次受けが自動応答なのか人が出るのかで中身は変わります。

法第9条:宿泊者に説明すべきことは決まっています

法律が説明を求めている相手は宿泊者です。何を説明するかも具体的に示されています。

騒音の防止

民泊制度ポータルサイトでは、例として次が挙げられています。

  • 大声での会話を控えること
  • 深夜に窓を閉めること
  • バルコニー等屋外での宴会を開かないこと
  • 届出住宅内は楽器を使用しないこと

近隣トラブルの多くは騒音から始まります。この4つがそのままハウスルールの骨格になります。

ごみの処理

宿泊者が届出住宅内で排出したごみについて、当該市町村における廃棄物の分別方法等に沿って、住宅宿泊事業者の指定した方法により捨てるべきであることを説明します。

分別のルールは市町村ごとに異なります。物件所在地の分別方法を調べたうえで、宿泊者が迷わない形に落とし込む必要があります。

火災の防止

ガスコンロの使用のための元栓の開閉方法およびその際の注意事項、初期消火のための消火器の使用方法、避難経路、通報措置等が挙げられています。

説明の方法

説明は書面の備付けその他の適切な方法により行うとされ、タブレット端末など宿泊中に確認できる形で実施します。必ずしも対面での説明は必要ありませんが、目につきやすい場所への掲示が必要です。

チェックイン時に渡して終わりではなく、滞在中いつでも確認できる状態にしておく、という趣旨です。

法第13条:標識の掲示には位置の決まりがあります

標識は、届出住宅ごとに公衆の見やすい場所に掲示します。掲示場所には具体的な指定があります。

  • 門扉、玄関(建物の正面の入り口)等の、概ね地上1.2メートル以上1.8メートル以下で、公衆が認識しやすい位置
  • 共同住宅の場合は個別住戸に加え、共用エントランス、集合ポストその他の公衆が認識しやすい箇所

標識は、住宅宿泊事業を実施している間は継続して掲示する必要があります。

この標識があることで、近隣の方はその住宅が届出済みの民泊であると分かります。黙って始めても、標識によって事業の存在は近隣に伝わるという点は、事前説明を考えるうえで押さえておくべき前提です。

事前説明は義務ではありませんが、やる意味があります

ここまでを踏まえて、事前の近隣説明をどう位置づけるかです。

法律上の一律の義務ではありません。それでも実施をおすすめするのは、法第10条の常時対応が義務である以上、苦情そのものを減らすほうが合理的だからです。

深夜の電話に必ず出る体制を用意することと、深夜に電話が鳴りにくい状態をつくること。両方やる必要がありますが、後者に手を打たないまま前者だけを頑張るのは効率が悪い選択です。

事前に伝えておくと効くこと

説明の形式に決まりはありませんが、次の点が伝わっていると、初動の苦情が入りにくくなります。

  • 連絡先。何かあったときにどこへ言えばよいか
  • 宿泊者にどんなルールを課しているか(騒音・ごみ・火気)
  • ごみの出し方をどう管理しているか
  • 管理を委託する場合は、その会社名と連絡先

近隣の方が困るのは、「誰に言えばいいか分からない」状態です。標識にも事業者の情報は載りますが、先に直接伝えておくかどうかで、最初の一報が自治体への通報になるか、事業者への電話になるかが変わります。

条例は必ず確認してください

ここまでは法律の話です。自治体が条例で独自の事項を定めている場合があります。

国土交通省の民泊制度ポータルサイトでは、条例を制定している自治体が一覧で示されており、具体的な条例内容については各自治体のホームページで直接確認する必要があると案内されています。

出典:各自治体の情報・窓口案内(条例等の状況等)(民泊制度ポータルサイト)

また住宅宿泊事業法には、地域の実情を反映する仕組みとして条例による住宅宿泊事業の実施の制限が設けられており、区域や期間が制限される場合があります。

出典:住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?(民泊制度ポータルサイト)

近隣への周知の手続きが条例で定められている自治体もあります。届出の前に、物件所在地の自治体の住宅宿泊事業担当窓口で、条例の有無と内容を必ず確認してください。この記事の内容は法律を前提としたものであり、条例の上乗せがある地域ではそちらが優先します。

まとめ

民泊の近隣対応について、押さえておきたい点を整理します。

  • 法律が求める近隣対応は3つ。宿泊者への説明(法第9条)、苦情への対応(法第10条)、標識の掲示(法第13条)
  • 「近隣住民への事前説明」は法律上の一律の義務ではありません
  • 法第10条では深夜早朝を問わず常時、応答または電話により対応することが求められる。宿泊者不在時も同じ
  • 宿泊者への説明は、騒音防止・ごみ処理・火災防止。書面の備付けその他の適切な方法で行い、目につきやすい場所に掲示する
  • 標識は門扉・玄関等の概ね地上1.2メートル以上1.8メートル以下。共同住宅では共用エントランスや集合ポストにも
  • 条例で独自の手続きが定められている場合がある。各自治体のホームページと窓口で直接確認する

近隣対応で失敗する原因の多くは、力の入れどころを間違えることにあります。丁寧に挨拶をしても、深夜の電話に出られない体制では苦情は積み上がります。逆に、常時対応できる体制を整えたうえで事前に連絡先を伝えておけば、最初の一報が自治体ではなく自分たちに来ます。

制度の適用は物件の所在地によって変わります。自治体の住宅宿泊事業担当窓口で、必ず最新の取り扱いを確認してください。

深夜早朝を問わない苦情対応の体制をどう組むかは、物件の立地や運営形態によって変わります。ご自身の物件で何が必要になるのか、判断がつかないところはお気軽にご相談ください。平均稼働率89%・630室の運営を通じて見てきた実務の観点から、確認すべき点をお伝えします。

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