民泊の日数制限|条例で短くなる場合と確認先の探し方
「民泊は年間180日まで、ということでいいのだろうか」
「近所で土日しか営業していない物件がある。あれは何なのか」
もしあなたがそう考えているならば、押さえるべきは180日は上限であって、保証された日数ではないという点です。住宅宿泊事業法では年間提供日数の上限が180日とされていますが、条例によってそれより短くなることがあります。
根拠は法第18条です。都道府県等は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができるとされています。
そして2026年7月15日、この制限の幅が広がりました。観光庁等の技術的助言により、従来のガイドラインで「適切ではない」とされてきたゼロ日規制について、一定のケースで可能とされています。営業可能日を土日祝前日等に制限する例も示されました。
つまり自分の物件で何日営業できるかは、法律ではなく条例を見ないと分かりません。そして条例の内容は、国のサイトを見ても分かりません。
ところが、その条例を確認する窓口が分かりにくいのです。窓口は保健所とは限りません。観光部局が担当している自治体もあります。
この記事では、平均稼働率89%・630室の運営実績をもとに、日数が短くなる仕組みと、自分はどこに聞けばよいのかを判定する方法を整理します。
これから物件を決める方は、ぜひご覧ください。
180日は上限であって、保証ではありません
まず、法律の建て付けを確認します。
住宅宿泊事業法では、年間提供日数の上限は180日とされ、人を宿泊させる日数が180日を超えないものと定義されています。あわせて、地域の実情を反映する仕組みとして条例による住宅宿泊事業の実施の制限が設けられています。
出典:住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?(民泊制度ポータルサイト|国土交通省・観光庁)
条例が制限できるのは「区域」と「期間」です
法第18条が定めているのは、区域を定めて期間を制限できる、という内容です。日数そのものを条例が上書きするというより、特定の区域で、特定の期間の営業を止めるという形になります。
結果として、年間で営業できる日数が180日より少なくなります。設備要件などは条例に委任されていない点も含め、条例が何を定められるのかは民泊の設備要件|国の基準と条例で上乗せされる範囲で整理しています。
2026年7月、制限の幅が広がりました
令和8年7月15日、観光庁等から地方公共団体宛てに技術的助言が発出されました。日数に関わる部分を挙げます。
ゼロ日規制の扱いが変わりました
通知では、届出住宅に係るゼロ日規制について、それぞれの自治体の判断において、合理的に必要と認められる限度において行うことは可能であるとされています。従来のガイドライン(平成29年12月)では「適切ではない」とされてきた扱いからの変更です。
土日祝前日等への限定という例が示されました
通知では、住宅地や教育施設等の周辺において制限を行わなければ静穏な居住環境等が損なわれるおそれがある場合に、新たな住宅宿泊事業を禁止することや、営業可能日を土日祝前日等に制限することが例として挙げられています。
冒頭の「土日しか営業していない物件」は、こうした条例の下で運営されている可能性があります。
既存の届出住宅も対象になりえます
強い必要性が認められ他に適切な対応策が存在しない場合には、既存の届出住宅に対しても、一定の猶予期間を設けた上で、実施を禁止したり営業可能日を土日祝前日等に限定したりする制限も考えられるとされています。
通知の全体像と、届出者の変更に関する重要な記述は民泊の規制緩和|緩んだ点と2026年7月の新通知を解説で扱っています。
条例の内容は、国のサイトでは分かりません
ここが調べる側の壁になります。
国土交通省の民泊制度ポータルサイトでは、条例を制定している自治体が一覧で示されていますが、具体的な条例内容については各自治体のホームページで直接確認する必要があると案内されています。
出典:各自治体の情報・窓口案内(条例等の状況等)(民泊制度ポータルサイト)
つまり、自分の物件がある自治体を特定して、そこに直接あたるしかありません。
どこに聞けばよいかを判定する
ここが実務でつまずく部分です。届出先は自治体によって違います。
3つのパターンがあります
| 物件の所在 | 届出先・問い合わせ先 |
|---|---|
| 東京23区・八王子市・町田市 | その区・市の担当課 |
| 保健所設置市(政令指定都市・中核市など) | その市の担当課 |
| 上記以外 | 都道府県(多くは地域を管轄する保健所・保健福祉事務所) |
まず自分の物件がどのパターンかを判定してください。同じ都道府県内でも、市によって届出先が変わります。
たとえば愛知県の場合
県内は物件のある地域を管轄する保健所が窓口ですが、名古屋市・豊橋市・一宮市などは市が窓口になります。名古屋市は健康福祉局 健康部 環境薬務課、豊橋市は豊橋市保健所 生活衛生課、一宮市は一宮市保健所 保健予防課です。
窓口は保健所とは限りません
ここが最も注意すべき点です。「民泊のことだから保健所」と思い込むと、たらい回しになります。
観光部局が担当している自治体があります
神奈川県では、県の窓口は保健福祉事務所ですが、市によって担当が分かれます。横浜市は健康安全部 生活衛生課、相模原市と横須賀市は保健所ですが、川崎市は経済労働局 観光プロモーション推進担当です。衛生部門ではなく観光部門が所管しています。
東京23区でも区ごとに違います
東京都では、23区・八王子市・町田市は各区市が届出先で、それ以外(多摩地域・島しょ部)は東京都 産業労働局 観光部 振興課 住宅宿泊事業担当です。
区の担当課も統一されていません。文京区はアカデミー推進課 観光担当、渋谷区は生活衛生課内コールセンターです。隣接する区でも、所管する部署が違います。
同じ区の中でも、民泊と旅館業で担当課が分かれていることがあります。電話をかける前に、自治体のサイトで「住宅宿泊事業」の担当を確認してください。
最新の窓口はここで確認できます
各自治体の窓口は、国土交通省の各自治体の情報・窓口案内(条例等の状況等)にまとまっています。組織改編で担当課が変わることがあるため、連絡する直前にこのページで確認するのが確実です。
窓口で聞くべきこと
日数について確認するなら、次の順で聞くと話が早いです。
- 条例があるか。ある場合、物件の住所は制限区域に含まれるか
- 制限区域なら、営業できる期間はいつからいつまでか。曜日の限定はあるか
- 2026年7月の技術的助言を受けた条例改正の予定があるか
- すでに民泊として使われていた物件の場合、その年度の営業実績は何日か
3つ目は今の時期に効きます。物件を取得してから条例が変わると、想定した日数で回せなくなります。改正の動きがあるかどうかは、聞けば教えてもらえます。
4つ目は見落とされがちです。日数は住宅ごとに通算されるため、前の事業者が使った日数を引き継ぎます。この点は民泊の180日を超えたら|指導の流れと新規予約の停止で詳しく扱っています。
日数が足りない場合の選択肢
条例の制限で日数が足りないと分かった場合、打てる手は制度の変更になります。
- 旅館業法の許可。180日の上限はありませんが、構造設備基準と立地の制限があります
- 特区民泊の認定。国家戦略特区の区域に限られ、滞在期間は3日から10日の範囲で条例が定める期間以上です
ただし、2026年7月の通知では、住宅地の静穏な居住環境を保護するために住宅宿泊事業を規制する際には、簡易宿所等も同様に規制するといった整合の確保に留意することが示されています。民泊が制限された区域で旅館業なら自由、とは限りません。
3つの制度の違いは民泊の業許可|届出・許可・認定のどれが必要かを整理にまとめています。
まとめ
民泊の日数制限について、押さえておきたい点を整理します。
- 180日は上限であって、保証された日数ではない
- 法第18条により、都道府県等は区域を定めて期間を制限できる
- 2026年7月15日の技術的助言で、ゼロ日規制が一定のケースで可能とされ、営業可能日を土日祝前日等に制限する例も示された
- 強い必要性が認められる場合、既存の届出住宅にも猶予期間を設けたうえでの制限がありうる
- 条例の内容は国のサイトでは分からない。自治体に直接あたる
- 届出先は東京23区・八王子市・町田市/保健所設置市/それ以外は都道府県の3パターン
- 窓口は保健所とは限らない。観光部局が担当している自治体もある
物件を決める前に確認すべきは、価格でも利回りでもなく、その住所で何日営業できるのかです。法律は180日と定めていますが、実際に使える日数は条例が決めます。そして条例は、これから動く可能性があります。
本記事は2026年9月時点の情報です。条例と担当窓口は自治体ごとに異なり、改正・組織改編があります。物件所在地の自治体の住宅宿泊事業担当窓口で、必ず最新の取り扱いを確認してください。
その住所で何日営業できるのか、どこに問い合わせればよいのか。物件を決める前に確認しておきたいところです。判断がつかない点はお気軽にご相談ください。平均稼働率89%・630室の運営を通じて見てきた実務の観点から、確認すべき点をお伝えします。
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